◆ペースメーカーって何?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■ はじめに

 ペースメーカーという器械を手術で入れてもらった、というお話をお聞きになったことはありませんか。よく“ヘルスメーター”と間違った発音をされる方がいますが、正しくは“ペースメーカー”です。

「ペース」は調律、「メーカー」は作り出す器械という意味で、ペースメーカーは「歩調取り」と言い換えると理解しやすいかもしれません。ではなぜ、心臓に「歩調取り」が必要なのでしょうか。

 
■ 心臓のはたらきとペースメーカー



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 心臓は一生涯休むことなく規則正しく動き、体中に血液を循環させるポンプですが、実動部隊(心筋)と指揮命令系統(司令塔および心筋に刺激を送る電線:刺激伝導系)を持っています。通常は司令塔(洞結節)が毎分50-90回の頻度で命令しますが、何らかの原因で司令塔の機能が損なわれると、脈拍が極端に遅くなります。これを洞不全(どうふぜん)症候群といいます。通常は司令塔のすぐ下にある中継地点(房室結節)が助け船を出して歩調取りをしてくれるのですが、それにも限界があって十分なリカバリーショットにはなりえません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 また、司令塔は十分な命令を出していてもその下の電線が切れかかってしまう病気もあります。房室(ぼうしつ)ブロックという名前がついています。これらの病気の最も恐ろしいところは心停止の危険があること、一時的でも心臓が止まると、脳への血液循環が途絶え、失神してしまうことです。また、ポンプ失調から心不全に陥ることもあります。「体は動くけれど、脈打ちの指令が心筋まで到達しないので私は動きません」と心筋がヘソを曲げている、お助けマンが必要な状況です。そこで「歩調取り」であるペースメーカーの出番です。
 

■ ペースメーカーの構造と役目

 

 

 

 

 

 





 

[Medical Tribune 2010年6月24日(VOL.43 NO.25)より]

 

 ペースメーカーは言わば、電池式心筋刺激装置です。植え込み手術は1.5~2時間程度、局所麻酔で行います。あらかじめ、鎖骨の下にある血管から心臓まで細い電線を通しておきます。次に、500円硬貨より少し大きめのリチウム電池を鎖骨のすぐ下の皮下に植え込みます。最後に電線と電池をつなぎ合わせて終了です。入院期間は3日~1週間程度です。手術後は常に心臓の状態を監視してくれ、電気刺激が途絶えた瞬間、間髪入れずに心臓に電気信号を送り、歩調取りをしてくれるというスグレモノです。まだ50年ほどの歴史しかなく、今では助かる命も当時は救命困難であったことが想像されます。脈が極端に遅くなる病気の原因はさまざまで、若くしてペースメーカー治療が必要になる方もいらっしゃいますが、多くは老化に伴うものです。高齢化の進む日本では徐々に症例が増加し、年間約6万人(2011年 日本デバイス工業会調べ)もの患者さんがペースメーカーの植え込み手術を受けています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



 

[Medical Tribune 2010年6月24日(VOL.43 NO.25)より]

 

■ 手術後の生活は

 ペースメーカーを入れて本当に動けるようになるの?と心配される方がいらっしゃいますが、実動部隊の心筋がしっかり動いている限りは、健康人と同じくらい元気に生活できます。外来では半年に一回程度、器械の点検をしていき、正常に作動しているかどうかを見ていきます。電池寿命は8~10年くらいで、電池交換手術も簡単に行えます。

■ ペースメーカーが必要かどうか

 

 主に自覚症状の有無で判断します。疑わしければ通常の心電図や24時間ホルター心電図を行い、ペースメーカーの適応について検討を行います。

 

<気を付けるべき症状は…>

 

 1)目の前が真っ暗になる、ふらついて転倒しそうになる、意識が遠のいて転倒したなどの一過性の脳虚血症状

 2)運動しても脈拍数が増えず、すぐに疲れたり息が切れたりするなどの運動耐容能の低下による症状

 3)体重増加や全身のむくみなどの心不全症状


気になる症状があれば、早めに循環器科を受診し、詳しい検査を受けましょう

■ ペースメーカーの新しい役割

 従来のペースメーカーは専ら徐脈性不整脈に対して埋め込まれていましたが、2004年から心不全の治療にも使われるようになりました。治療対象はある一定の基準を満たした患者さんに限られますが、心機能が極端に低下している患者さんの寿命を延ばし、胸の苦しさを和らげて活動範囲を広げる、など効果をあげてきています。